20110729

■おーい

誰かが呼んでいる。
どこですかー?どこですかー?

古い映画みたいな浅い光の中で、
小さな子供達が楽しそうに追いかけっこしてる。
海の中ではサンゴが息をして、
空には虫が飛んでいる。
バスケットはからっぽだ。

わたしはここにいます、よ。

20110723

■4:3

青と緑が曖昧なジャングルの中で、
クチバシとまつ毛だけが妙に派手な鳥が
狂ったみたいに叫んでる。

静かに、と注意する前に、
目の前にブラウン管テレビがたくさん落ちてくる。
ガラスが割れて、飛び散って、
中からドロドロが溢れてきた。

溺れて死ぬ前に地球を掴んだら、みんな死んじゃった。

ごめんね。

20110717

20110715

■たーくん

懐かしい友達が
当時のマンガのエンディングテーマを歌っていた。
次に必ず流れる、CMソングまでを完璧に。
楽しそうに笑う彼は当時のままで、
私は喉が渇いて、
引きつったようにしか笑えなくなっていた。

彼の短い生涯の
誰も知らない大きな秘密は
忘れる一歩手前で、私が抱えていよう。

20110706

■星の数

何をやってもだめな上司が、首を切られる。
文字通り。明日の午後丁度。
濁った噴水の広場、高台の古いギロチン。

本人はそれを、
始めて王様が私に命令をしてくれた!
と、とても嬉しそうに笑った。

最後の晩餐に呼ばれ、
同僚3人と彼のお気に入りのレストランへ。
隣の席ではそっくりな母娘が
山盛りのエビを剥きながら、もくもくと口へ運ぶ。
彼はやっぱり嬉しそうに、
明日の自分の勇姿を想像し、
饒舌に身振り手振り、私達に聞かせてみせる。
同僚は話を合わせて笑い、頷く。
私にはどうしてもそれができなくて、
震える唇を誤摩化すために煙草を吸い続けた。

帰り道、みんながバラバラに帰っていく中、
背の低い後輩が、やたらと狭い天井で
何度も頭をぶつけていた。
痛い、あれ? 痛い、あれ?
私は5回に1度くらいの割合で、
小さな窓から星を数えながら、だいじょうぶ?と呟いた。