20110330

■王様とわたし

おひげの長い王様と横に並んで、
見たことのないような色の食事。
お互い同じ方向を向いて。
相手のジャマにならない様に少しあいだを空けて。

めがねをかけた灰色のスーツの人が、
転がり込むように部屋に入ってきて、
王様とわたしに媚諂う。

それで、あの、その、えへへ、

物欲しそうな目。
王様にひそひそ話で教えてもらって、
熱湯に浸かったひたひたのパンを
30cmの長いお箸で、めがねの顔に向かって投げつけた。

あちっ、あはっ、あ、ありがとうございま、う、うまひ!

熱くてまっかになった顔。
曇っためがねにはパンのかけら。
嬉しそうに貪り食う、薬指には指輪。
それを王様に告げ口して、
目の前のひたひたのパンを食べる。

ちくしょう。
やっぱりまずいぜ。

20110322

■ハレルヤ

公園ではしゃぐ子供達の声。
透明な陽射し。
溶け落ちたアイスクリームに群がるアリ。

木陰の剥げた白いベンチで、
知らない誰かの幸せを傍観する。

ハレルヤ

20110318

□ばんそうこう

まっくらだ。
何も見えない。
大きな流れ星が流れた。
それだって、君には届かない。

うっとおしいくらい、嘘をつこう。
流れ星が流れたよ。
紫の煙は何も教えてくれないし。
それでもやっぱり君が好きだし。

さらさらの前髪を掻き分けて、
瞳にピンク色のばんそうこうを貼ってあげる。

これは恋である。
これは、恋である。

20110315

■声帯

ばらばらになって漂っている。
ひとりぼっち。
薄い赤と黄緑と群青色と金色。薄いクリームのセカイ。
さみしくて叫んでも声が出ない。
声帯は左手の後ろにいる。
なら、しかたない。
甘い匂いがするけど、鼻は下のほうにいる。
睫毛が眼球の前を横切った。

20110307

■ネックレス

白いさらさらの地面を歩いてる。
少し風が吹いてて、地面がが巻き上がる。
空気まで白くぼんやりとしていた。

あ、右足が地面に埋もれて沈み始めてる。
抜こうとしたら抜けなくて、かわりに左足も沈んでいく。
動くからだめなんじゃないかと、じっとしてみるけど、
少し動いてるらしくて、結局ずぶずぶ沈んでく。
あぁ、これはもう終わりだな。死ぬな。
もう鎖骨まで沈んでる。
あきらめたら地面が震えて、結局ずるりと助かった。
きっと吐き出された。
服は粉まみれで真っ白だ。
お気に入りの服だったのに。
でも悪くない。

さらさらの地面の中に、
たまに小さな固まりがあるのを見つけて、
拾いながら歩いた。
家に帰ったら、繋げてネックレスにしようと思う。

20110306

■赤い双眼鏡

まだらな鳥が3羽、空を飛んでいる。
遠く、惑星イトカワの上に立って手を振った。
左手には大事なガラス製の赤い双眼鏡。
星は瞬かないし、地球は青くない。