20111001

□さがしもの

ぐるぐると回る

世界中のおはようとおやすみを越えて、空を飛ぶ

君が、どこにもいない

20110919

■夜明け

するすると日が昇って、
わたしは仰向けのまま落ちていく。

鳥がたくさん飛んでる。
上にも、下にも。

アクリルみたいな濁った雨よりも早く下へ、下へ。
にせものの涙は上に、上に。
鳥たちは全てをうまく避けて、
わたしと一緒に落ちていく。
地図がないから、地面はこない。

誰も知らない。

だから、何も怖くない。

20110825

■グッドモーニング

夢からさめて、
大切なことを思い出した。
わたしは最低な人間です。
だけど、大好きな友達や、
尊敬する人達、
大切なみんなはとても素敵で、
だから私は生きています。

20110809

□ひこうき

君と2人、屋上で、抜けるような青い色を見ていた。
少し早いセミの声と、先生の授業をする声が遠く聞こえる。

さっき配られたばかりのプリントで、紙ひこうきを作る。
君のはどこまでも行くのに、僕のはすぐに落ちてしまった。

「へたくそ」

わかってる。
僕の作りかけのひこうきを奪って笑う。
そっと、2人のひこうきを重ねて、胸から外したばかりのスカーフで包む。

「合体」

少しいやらしいことを考えてしまった。不覚。

「あ、今、変なこと考えたでしょ」

違う、と答える前に、
君は空へ飛んだ。

20110729

■おーい

誰かが呼んでいる。
どこですかー?どこですかー?

古い映画みたいな浅い光の中で、
小さな子供達が楽しそうに追いかけっこしてる。
海の中ではサンゴが息をして、
空には虫が飛んでいる。
バスケットはからっぽだ。

わたしはここにいます、よ。

20110723

■4:3

青と緑が曖昧なジャングルの中で、
クチバシとまつ毛だけが妙に派手な鳥が
狂ったみたいに叫んでる。

静かに、と注意する前に、
目の前にブラウン管テレビがたくさん落ちてくる。
ガラスが割れて、飛び散って、
中からドロドロが溢れてきた。

溺れて死ぬ前に地球を掴んだら、みんな死んじゃった。

ごめんね。

20110717

20110715

■たーくん

懐かしい友達が
当時のマンガのエンディングテーマを歌っていた。
次に必ず流れる、CMソングまでを完璧に。
楽しそうに笑う彼は当時のままで、
私は喉が渇いて、
引きつったようにしか笑えなくなっていた。

彼の短い生涯の
誰も知らない大きな秘密は
忘れる一歩手前で、私が抱えていよう。

20110706

■星の数

何をやってもだめな上司が、首を切られる。
文字通り。明日の午後丁度。
濁った噴水の広場、高台の古いギロチン。

本人はそれを、
始めて王様が私に命令をしてくれた!
と、とても嬉しそうに笑った。

最後の晩餐に呼ばれ、
同僚3人と彼のお気に入りのレストランへ。
隣の席ではそっくりな母娘が
山盛りのエビを剥きながら、もくもくと口へ運ぶ。
彼はやっぱり嬉しそうに、
明日の自分の勇姿を想像し、
饒舌に身振り手振り、私達に聞かせてみせる。
同僚は話を合わせて笑い、頷く。
私にはどうしてもそれができなくて、
震える唇を誤摩化すために煙草を吸い続けた。

帰り道、みんながバラバラに帰っていく中、
背の低い後輩が、やたらと狭い天井で
何度も頭をぶつけていた。
痛い、あれ? 痛い、あれ?
私は5回に1度くらいの割合で、
小さな窓から星を数えながら、だいじょうぶ?と呟いた。

20110628

□グミ

君に会えれば、
他にはなにもいらないけど、
大好きなグミだけは少し食べたいな。

20110623

□愛のメロン爆弾

道ではたくさんの“彼女たち”が死んでいる。
僕はそれを踏まないように、気をつけて歩いた。

自転車に乗ったウサギとカモノハシが、
ゴールのないレースを続けてる。
空からはメロンの爆弾。
僕にはあたらないようにできてるんだって知っている。

“彼女たち”が 破損していく。
辺りは甘ったるい香りで溢れて、
たぶん、クチナシの花の匂い。

やっぱりぼくは君を愛してる。

20110620

■くしゃみ

浅い湖にフラミンゴが一羽。
なるべく水面を揺らさないように近付いて、
真似をして片足で立つ。
水温は低くて、どんどん体は冷えてくる。
堪えられずにくしゃみをしたら、
フラミンゴは消えて、
辺りは本当の暗闇になった。

20110615

■アイロンをあてたシャツ

空はどうしようもなくオレンジで色で、
君は灰色だった。
写真の君を切り取って、
くしゃくしゃに丸めて飲み込んだ。
背筋を伸ばして、嘘つきな君に会いに行くよ。

早く、夢なら覚めてくれ。

20110531

No thank you.

別に、夢を見ることをさぼっていた訳じゃない。

気付いたら、雨の季節。

ハミング

20110521

□Good night.

The world of beautiful despair.

I wanted to become you.

Where are you?
This place overflows with the imitation.

Good night.
Good night.
Good night.

In the brand new season.

The smoke of the cigarette scorched you of the pink color.

(This is a foolish fiction. )

20110424

■ゴーグル

着ていく服が決まらなくて、
遅刻しそうだから、
動きやすい膝上のスカートみたいなパンツと
ニーハイソックスと、薄手のジャケットを着て家を出た。

バスを何本か見逃して、朝なのに空いてるバスに乗る。
隣のおじいさんがお餅の話をしていて、
こっそり喉に詰まらせない事を祈った。
そんな私に運転手さんは気を良くして、
遅刻しそうだと伝えたら、
特別に坂道まで行ってくれるらしい。
同乗者の緑色の髪のサラリーマンも喜んで、
坂道の一番上で、4人でバスを飛び降りた。

空を車が飛ぶかわりに、
坂道を下って人が飛ぶようになった。
遠い昔、人は空を飛ぶことを夢見ていたって。
私は空を飛ぶ事がきらいだ。
おじいさんは、年を取ると飛距離が縮むから、と
先におばあさんの待つ家の方向へ
軌道をかえてゆっくりと降りていって、
お年寄りは大切にしないと、
と運転手さんも一緒に降りていった。

学校は山の上にある。
少し遠いけど大丈夫?とサラリーマンが心配してくれた。
私は学校で一番飛ぶのが上手です。
と言ったら、グレイト。と手を叩いて、
くるくると回って手を広げながら降りていった。

朝から飛びたくないから、バスに乗ったのに。
学校に着いたらやっぱり遅刻で、チームメイトに怒られた。
しかも飛行訓練用のゴーグルを忘れた。
学校で借りれるゴーグルが、
今日の服装と合っていてよかった。

それだけが、今日の全てもの救いだった。

20110418

■レイヤー

わたしはここにいなくて、
もちろん、そこにもいない。
誰かが叫んでる。
その声は誰にも届かないよ。
イメージは重なって、まっくろになる。
ゆっくりと端から燃えていく。
最後のランデヴーはパンジーの中で。

20110413

■カギ

草むらに水の入ったコップ。
適当に、そこら中に。
キラキラ反射して、きれいで、
君にも見せてあげたい。

うまくコップを避けながら、
反射した光を足首に浴びておどる。
光は風に乗って、世界を揺らす。

探していたカギを見つけたよ。
早く、会いにいかなくちゃ。

20110407

□レモネード

手を繋いで、あの公園へ行こう。
僕はレモネードを作るから、君はサンドイッチを作って。
暖かい日差しの中で微笑んで歩こう。
レモネードが喉を泳ぐ。
トマトとレタスとハムのサンドイッチ。

空は永遠に青くて、世界の終わりを見た。

20110402

■ミルク

5日後に太陽が落ちてくる。

自殺志願者が道でたむろして、
通らない車に苛立っている。
花が枯れた庭で、残り少ない大好きな紅茶を飲みながら、
おじいさんとおばあさんが微笑む。
新しい宗教団体が手を繋いで、
大きくなりすぎた赤い太陽に
浅い海辺で祈りを捧げてる。

賞味期限が切れかけた牛乳を飲み干した。
最後の日に温かいチャイを飲むことができなくて、
とても残念だと思う。

20110330

■王様とわたし

おひげの長い王様と横に並んで、
見たことのないような色の食事。
お互い同じ方向を向いて。
相手のジャマにならない様に少しあいだを空けて。

めがねをかけた灰色のスーツの人が、
転がり込むように部屋に入ってきて、
王様とわたしに媚諂う。

それで、あの、その、えへへ、

物欲しそうな目。
王様にひそひそ話で教えてもらって、
熱湯に浸かったひたひたのパンを
30cmの長いお箸で、めがねの顔に向かって投げつけた。

あちっ、あはっ、あ、ありがとうございま、う、うまひ!

熱くてまっかになった顔。
曇っためがねにはパンのかけら。
嬉しそうに貪り食う、薬指には指輪。
それを王様に告げ口して、
目の前のひたひたのパンを食べる。

ちくしょう。
やっぱりまずいぜ。

20110322

■ハレルヤ

公園ではしゃぐ子供達の声。
透明な陽射し。
溶け落ちたアイスクリームに群がるアリ。

木陰の剥げた白いベンチで、
知らない誰かの幸せを傍観する。

ハレルヤ

20110318

□ばんそうこう

まっくらだ。
何も見えない。
大きな流れ星が流れた。
それだって、君には届かない。

うっとおしいくらい、嘘をつこう。
流れ星が流れたよ。
紫の煙は何も教えてくれないし。
それでもやっぱり君が好きだし。

さらさらの前髪を掻き分けて、
瞳にピンク色のばんそうこうを貼ってあげる。

これは恋である。
これは、恋である。

20110315

■声帯

ばらばらになって漂っている。
ひとりぼっち。
薄い赤と黄緑と群青色と金色。薄いクリームのセカイ。
さみしくて叫んでも声が出ない。
声帯は左手の後ろにいる。
なら、しかたない。
甘い匂いがするけど、鼻は下のほうにいる。
睫毛が眼球の前を横切った。

20110307

■ネックレス

白いさらさらの地面を歩いてる。
少し風が吹いてて、地面がが巻き上がる。
空気まで白くぼんやりとしていた。

あ、右足が地面に埋もれて沈み始めてる。
抜こうとしたら抜けなくて、かわりに左足も沈んでいく。
動くからだめなんじゃないかと、じっとしてみるけど、
少し動いてるらしくて、結局ずぶずぶ沈んでく。
あぁ、これはもう終わりだな。死ぬな。
もう鎖骨まで沈んでる。
あきらめたら地面が震えて、結局ずるりと助かった。
きっと吐き出された。
服は粉まみれで真っ白だ。
お気に入りの服だったのに。
でも悪くない。

さらさらの地面の中に、
たまに小さな固まりがあるのを見つけて、
拾いながら歩いた。
家に帰ったら、繋げてネックレスにしようと思う。

20110306

■赤い双眼鏡

まだらな鳥が3羽、空を飛んでいる。
遠く、惑星イトカワの上に立って手を振った。
左手には大事なガラス製の赤い双眼鏡。
星は瞬かないし、地球は青くない。