20110424

■ゴーグル

着ていく服が決まらなくて、
遅刻しそうだから、
動きやすい膝上のスカートみたいなパンツと
ニーハイソックスと、薄手のジャケットを着て家を出た。

バスを何本か見逃して、朝なのに空いてるバスに乗る。
隣のおじいさんがお餅の話をしていて、
こっそり喉に詰まらせない事を祈った。
そんな私に運転手さんは気を良くして、
遅刻しそうだと伝えたら、
特別に坂道まで行ってくれるらしい。
同乗者の緑色の髪のサラリーマンも喜んで、
坂道の一番上で、4人でバスを飛び降りた。

空を車が飛ぶかわりに、
坂道を下って人が飛ぶようになった。
遠い昔、人は空を飛ぶことを夢見ていたって。
私は空を飛ぶ事がきらいだ。
おじいさんは、年を取ると飛距離が縮むから、と
先におばあさんの待つ家の方向へ
軌道をかえてゆっくりと降りていって、
お年寄りは大切にしないと、
と運転手さんも一緒に降りていった。

学校は山の上にある。
少し遠いけど大丈夫?とサラリーマンが心配してくれた。
私は学校で一番飛ぶのが上手です。
と言ったら、グレイト。と手を叩いて、
くるくると回って手を広げながら降りていった。

朝から飛びたくないから、バスに乗ったのに。
学校に着いたらやっぱり遅刻で、チームメイトに怒られた。
しかも飛行訓練用のゴーグルを忘れた。
学校で借りれるゴーグルが、
今日の服装と合っていてよかった。

それだけが、今日の全てもの救いだった。

20110418

■レイヤー

わたしはここにいなくて、
もちろん、そこにもいない。
誰かが叫んでる。
その声は誰にも届かないよ。
イメージは重なって、まっくろになる。
ゆっくりと端から燃えていく。
最後のランデヴーはパンジーの中で。

20110413

■カギ

草むらに水の入ったコップ。
適当に、そこら中に。
キラキラ反射して、きれいで、
君にも見せてあげたい。

うまくコップを避けながら、
反射した光を足首に浴びておどる。
光は風に乗って、世界を揺らす。

探していたカギを見つけたよ。
早く、会いにいかなくちゃ。

20110407

□レモネード

手を繋いで、あの公園へ行こう。
僕はレモネードを作るから、君はサンドイッチを作って。
暖かい日差しの中で微笑んで歩こう。
レモネードが喉を泳ぐ。
トマトとレタスとハムのサンドイッチ。

空は永遠に青くて、世界の終わりを見た。

20110402

■ミルク

5日後に太陽が落ちてくる。

自殺志願者が道でたむろして、
通らない車に苛立っている。
花が枯れた庭で、残り少ない大好きな紅茶を飲みながら、
おじいさんとおばあさんが微笑む。
新しい宗教団体が手を繋いで、
大きくなりすぎた赤い太陽に
浅い海辺で祈りを捧げてる。

賞味期限が切れかけた牛乳を飲み干した。
最後の日に温かいチャイを飲むことができなくて、
とても残念だと思う。