20110424

■ゴーグル

着ていく服が決まらなくて、
遅刻しそうだから、
動きやすい膝上のスカートみたいなパンツと
ニーハイソックスと、薄手のジャケットを着て家を出た。

バスを何本か見逃して、朝なのに空いてるバスに乗る。
隣のおじいさんがお餅の話をしていて、
こっそり喉に詰まらせない事を祈った。
そんな私に運転手さんは気を良くして、
遅刻しそうだと伝えたら、
特別に坂道まで行ってくれるらしい。
同乗者の緑色の髪のサラリーマンも喜んで、
坂道の一番上で、4人でバスを飛び降りた。

空を車が飛ぶかわりに、
坂道を下って人が飛ぶようになった。
遠い昔、人は空を飛ぶことを夢見ていたって。
私は空を飛ぶ事がきらいだ。
おじいさんは、年を取ると飛距離が縮むから、と
先におばあさんの待つ家の方向へ
軌道をかえてゆっくりと降りていって、
お年寄りは大切にしないと、
と運転手さんも一緒に降りていった。

学校は山の上にある。
少し遠いけど大丈夫?とサラリーマンが心配してくれた。
私は学校で一番飛ぶのが上手です。
と言ったら、グレイト。と手を叩いて、
くるくると回って手を広げながら降りていった。

朝から飛びたくないから、バスに乗ったのに。
学校に着いたらやっぱり遅刻で、チームメイトに怒られた。
しかも飛行訓練用のゴーグルを忘れた。
学校で借りれるゴーグルが、
今日の服装と合っていてよかった。

それだけが、今日の全てもの救いだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿